借りぐらしのアリエッティ

残念でした。
観終わって、残念でしょーがなくて、
ブログを開設してこの想いを公開したくなったくらい(^^)
残念でした。
 
何が残念って、
宮崎アニメが持っている見終わった後の開放感や爽快感、明日への活力のようなものが、
ほとんど感じられなかったことです。
残酷なシーンが話題になった『もののけ姫』でさえ、
最後にアシタカとサンが頑張るって言ってるんだからって思えたのですが…
 
確かに、「現代」と「小人」という設定であれば、
「滅びゆく種族」的なテーマになるのは分かりますが、
今までの宮崎監督であれば、多少強引にでも、
例えば翔君の手術が上手くいったとか、
アリエッティ達が他の小人と暮らしていく様子などを
エンドロールにでも入れてくれそうなものなのですが…
 
テーマ性から現在の日本や世界の情勢を敷衍して、
アリエッティ達や翔君の今後を未確定にしたのかもしれませんが、
やっぱり残念でした。
あのラストでは、翔君の手術は上手くいかないかも知れませんし、
アリエッティ達はヤカンごと野良犬にでもかっぱらわれたかも知れません。
悲惨な結末をも観客に想像させることは、
「入口を広く、出口を高く」という宮崎アニメとは正反対のものではないでしょうか?
それとも脚本とは名ばかりで、
プロットだけで「あとは麻呂よろしくー」ってとこだったのでしょうか?
 
あまりにもラストが残念だったので、
中身に対してケチをつける部分が、沸々と湧いてきてしまいます。(^^)
一番納得いかなかったのが、
何故、床下の家の丁度真上に、床下を伺う覗き口が設置されていたか、です。
しかも御丁寧に取っ手までつけて…
 
床下の家をアリエッティの先祖が造ったのであれば、覗き口の真下になど造らないはずですし、
縦しんば床下の家が造られた後に覗き口が設置されたのなら、その時に床下の家は見つかっていたはずです。
大体、普通押入の床に、床下を伺う覗き口など設置されません。
どー考えても、尺の関係で、
床下を全て引っぺがすというシーンを入れることが出来なかったからとしか思えません。
しかも、翔君がドールハウスの壁と入れ替えるとか、
ハルさんが床下の家を見つけるとかのシーンで便利に使われてますし…
御都合主義を通り越して、あまりにも思慮に欠けた設定ではないでしょうか?
 
翔君が、「何故か」覗き口の存在を知っていたとゆーのも納得いきません。
母親から小人の存在を聞かされていたようなセリフはありましたが、
覗き口の存在も母親に教えてもらったのでしょうか?
それならば、母親は覗き口の真下の床下の家を確認していたことになりますが、
その時小人の方は確認されたことに気付かなかったのでしょうか?
 
「人間に見られてはいけない。見られたからには、引っ越さないといけない。」
という掟があるとしながら、
冒頭のシーンからアリエッティは翔君に見つかっていますし、
アリエッティの御先祖は翔君の大祖父に見つかっていてドールハウスまで造ってもらってますし、
その上翔君の母親にまで見つかっているのでしたら、
小人の掟など、
最初にアリエッティが人間には見つかっていないと言い張っていたように、
見つかっていないと自分だけで思い込んでいたら済むような軽い掟なのかと思えてしまいます。
 
物語のクライマックスを作るために一人悪役にされたであろうハルさんは
ムスカ以上に気の毒で滑稽でしたし、
逆に現実世界のように翔君の母親の愚痴を心臓の悪い翔君に宣う大叔母は
ハルさん以上に嫌らしく思えました。
大体、何故年寄りの御手伝いさん一人に心臓の悪い翔君の面倒を見させていたのでしょうか?
ベンツで自分の家と往復するくらいなら、
ベンツが買えるくらいの財力のある大きいであろう自宅に翔君を引き取ることはできなかったのでしょうか?
 
スピラーがジムシィみたいなのはオマージュとして許せるのですが、
あまりにも登場シーンが少なすぎです。
せめて屋根に登るシーンでは弓矢を使って欲しかったです。
やはり尺が短すぎたのではないでしょうか?
 
うーん…ケチをつけたらキリがないのですが、あと一点、
ベンツに乗っている大叔母のスケールは変です。(^^)
レイアウトチェックが甘いのではないでしょうか?
米林監督には今後精進を求めますって、エラソーだな…ごめんなさい。
 
大分ケチをつけてきましたが、冒頭から「借り」のシーンまでは、結構楽しめました。
宮崎監督では出来ないのでは、と思えるようなシーンもありましたし…(台所のシーンはよかったです。)
でもやはり、今までの宮崎アニメのワクワク感があまり感じられませんでした。
クライマックスのシーンはそれなりに見応えがあったのですが、
それでも心臓の悪い子に走られては、観ているこっちが痛々しく感じてしまいます。
それは、設定の問題が大きいのでしょうが、それだけにやはり残念でした。